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「どんな色がいい?」
「これ!紋白蝶がいい!!」
そう言うとオジサンは、紋白蝶の絵の上に手を置いて、もう片方の手でヒラヒラ飛んでいた蝶を捕まえる。
「着色!」
オジサンがそう叫んで蝶を解放すると、その蝶は紋白蝶と同じ色になっていた。
「すごい!」
「さぁ、次は君の番だ。」
「うん!」
あれから、7年。
僕は今、中学三年。
気がつけばオジサンのお店はなくなってて、その頃にはもう、色んなことができるようになっていた。
「ここでやってることは、誰にも言ってはいけないよ。
オジサンと君だけの秘密だ。」
「うん!」
他の子には出来ないことが出来る。
それだけで、充分だった。
それに、他の人に話すと魔法が使えなくなってしまう気がして誰にも言わなかった。
今思えば、あれは毎日夢を見てただけのような気がする。
石を蝶に?
枝を刃に?
物理的に不可能だ。
でもなぜか幼い頃の記憶は鮮明に残っていて不思議。
今も、たまに思い出す。
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