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前原家はとにかくいい家族だ。
僕に“家の事情に巻き込んでしまってすまない”と、何度も謝罪の言葉をかけてくるし、血は繋がっていなくても、家族として大切にしてくれる。
僕は僕で、そんなお父様や紗奈耶さんの力になりたくて、毎日必死に勉強する。
それが僕なりの恩返し。
「すいません、レポートのきりが悪くて…」
「気にしないで、」
紗奈耶さんは綺麗な長いサラサラの髪をなびかせながら、席に着くよう促す。
「「「いただきます。」」」
三人揃ったところで食事をとる。
これは家族間で暗黙の了解としてある、決まりのようなもので、お父様が仕事で遅れても、皆で待っている。
「裕也、」
「はい」
皆が食べ終えてきた頃、不意にお父様が僕の名前を呼ぶ。
「高校は何処に行くか、決めたかい?」
「はい、秀英学園に行こうかと」
「秀英か、私の母校だね。
頑張りなさい」
「はい」
秀英は、日本のトップ高校と言っても過言ではない程の学校。
お父様のためにも、そこに行こうと昔から決めていた。
「あら、私の後輩になるのね」
秀英は、紗奈耶さんも通っている。
「よろしくお願いします」
「受かったらね」
「うぅ……はい」
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