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「昔教えただろう、人形を操る魔法を」
女の人は相変わらず虚ろな目を僕に向けながらそう喋る。
けれどもその声は、明らかに懐かしいオジサンの声。
「ォ…オジサン?」
「そう、昔はそう呼ばれてたね
覚えてるかい?」
「忘れてはいません…けど、夢かなんかじゃないんですか?魔法なんて」
幼い頃の記憶を、最近では"夢"という風に処理して考えていた為、そんなこと言われても困る。
「魔法なんて、今目の前にあるじゃないか」
「目の前?
まさか、この女の人を操ってるなんて言いませんよね?」
「その通り!よく覚えてたね。
これは人形。
さ、そろそろ行こ、君が必要になってきたんだ」
「え?行くってどこに?」
「もちろん、こっちに
昔話したろ?」
「え?」
無表情の女の人の口から陽気なオジサンの声がしてきて、なんだか気持ち悪い。
「ま、とりあえず来てもらうから」
オジサン(というか女の人)がそう言うと、周りの景色が一気に色を無くす。
在るのは僕の体だけ。
(なに………これ)
全く今の自分の状態がわからず、あたりを見るが辺り一面真っ白。
まるで宙に浮いているかのように、着物を着たまま僕はその世界にいた。
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