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「ロレンス、服屋はまだか」
「……じき到着するかと」
「暇だ」
「では楽隊に何か奏でさせましょうか」
「ざけんな」
こちらのセリフだクソガキャア。
こめかみを押さえる手が震える、膝に力が入らなくなってうっかり王座の背もたれに手を着いてしまった。
「どうした?貧血か?」
「…いえお構いなく」
「そか。楽隊はヴィオラ弾いてる奴が気に食わないからやだ」
「…左様ですか」
服屋はやく来い。
今だけは切にそう願う。
はやく来い、来て。
「服屋とロレンスは友達なんだよな?」
「知人です」
「仲は良かったのか「まったく」怖いぞおまえ」
思い出したくもないあの狐目、私の記憶から出ていけ。
勝手に手繰り寄せられていく記憶の糸によれば、彼はとても最低な男だったらしい。
もはや過ぎ去りし過去のことなのでひどく曖昧ではあるが。
鮮明に思い出してはいけないのだ、はらわたが煮えくり返ってどうしようもなくなってしまうから。
「羨ましいな」
「…はい?」
「学生時代の友達。羨ましい響きだ」
「友達では…」
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