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…どうやら、貴族校と庶民校とでは内情も違うようだった。
あんな性質の悪い知り合いを持つくらいなら、孤独な貴族校生活の方が幾分マシかとも思われるが。
周囲の多くが許嫁を持つ身の上ならば、想う女性を奪われる惨めさを味わうこともあるまい。
あの時鼻先を掠めた金色の巻き毛を、今でも忘れることが出来ないのだ。
「国王陛下」
重々しい扉を開けて、二人の兵士が入ってきた。
その間に一人の見知った影。
あぁ、頭が痛い腹が痛い、後頭部を抱えて叫び出しそうだ。
「服屋の男が謁見に参りました」
「通せ」
二人の兵士がさっと身を退けると、細い目の痩躯な男がぼろい靴を履いた足を前に出した。
「大変遅くなりまして、申し訳ございません王様」
そう言ってニヤリと笑った視線は、確かに私とぶつかった。
「はやく見せろ」
「畏まりました」
うやうやしくひざまづいて、抱えていた包みを解いた。
柔らかな生地に手を差し入れ、高く掲げたその新しい着物は
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