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「品が間に合わなかったのならば素直にそう言えばいいんだ」
「いっいいえ陛下これは」
「嘘つきは嫌いだバーカ、衛兵」
パンパンと手を叩き、近くに控えていた衛兵達を呼びつける。
こういう時ばかりは王様らしい。
「この男を牢屋にぶち込め、国王に詐欺を働こうとした」
「はっ」
二人の兵士に両脇を抱えられ、見事な刺繍のされたカーペットの上を引きずられていく。
青いベルベットに施された物より、こちらの方が断然美しい。
「ギッ…ギルベルト!助けてくれ!」
「おまえに名前で呼ばれる筋合いはない、恨むならば陛下に詐欺を働こうなどとした己の浅知恵を恨め」
「ギルベルトー!」
涙目で引きずられていくジェバンニ、やがて物々しい扉が音を立てて閉ざされた。
聞き苦しい余韻と静寂を残して。
「ロレンス」
「はい」
「おまえギルベルトっていうのか」
「はい」
「格好いいな」
「恐れ入ります」
王座台の階段を降り、カーペットの上の忘れ物を柔らかな包みごと摘み上げる。
上質なベルベット、金の刺繍、品のいいレース。
「こちらはどのようにいたしましょう」
「捨てろ、そんな安っぽい布」
「畏まりました」
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