温もり

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
時間ギリギリの電車に乗って、 君の待つあの駅へ。   息を切らしながら、それでもガラ空きの席には座らずに 入り口の窓ガラスから外を見つめて、 もうすぐだね、と、心が弾んで。 ドアが開くとすぐに飛び出した。   改札を抜けたその先に君が居て、 僕はゆっくり近付いた。 そしたら、君は微笑んだんだ 嬉しそうに、恥ずかしそうに。 愛しくなって、そのまま、抱き締めた。     宛もなく君の自転車で街を走って。 風にかき消されてく君の話し声を一生懸命に聞きながら、 触れている君の温もりを体に感じながら、 幸せだ。と、感じた。     電車が出るギリギリに駅に着いて、 僕はまた君を抱き締めて。 そして、小さく口付けて、涙の溜まる君の目をみて。 小さく、笑って見せた。   最後まで繋いでいた手を離して、僕はホームへ…誰も居ない車両へ。 すぐに走り出した電車、僕は外をみる。 そこには君が居て、1人になった自転車で 僕しかいない車両を追いかけていた。   そのまま離れてく君を見つめたまま、僕は泣いていたんだろう。 君が見えなくなってから、頬に、雫が流れて。   誰も居ないその場所で またね、と、小さく呟いた。   次は、もっと一緒に居ようねと。   ずっとずっと、一緒に居ようねと。     今では遠くなったけど、 あの日の温もりは、まだ残ってる。   強さをくれた君の 笑顔をくれた君の 幸せをくれた君の   大切な、思い出のままで。  
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!