囚われの姫君は女番長

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翌日―――― 呉羽は信じがたい光景を目の当たりにするのだった。 クラスに入るなり、名前も知らないクラスメイトから拍手が送られた。 何がなんだかわからないまま、絵梨奈に視線を送ると、そっとこう、耳打ちされた。 「あのね、昨日の不良倒したの呉羽だって言ったら、結構見てた人いたらしくて……なんか呉羽有名人みたいよ?」 「え……ナニソレ」 「隣の八杉高の人達に悩まされてたみたいなの、ここの高校……だからソイツ等を倒した呉羽はヒーロー、あ、違う――ヒロインになったって事」 ね? と可愛くウインクする絵梨奈。 いや、それはかなり困るんですケド。 呉羽の顔が一気に真っ青になる。こんなしょっぱなから有名人なんかになったら、普通の学生生活が送れないじゃないか。 と、頭を抱える。 トボトボと自分の席に着くと、目の前にサッと現れた影。 「呉羽さん御早うございます!」 「……うわぁ、敬語は止めてくれ」 絵梨奈の元、彼氏だ。 同学年、というにも関わらず、彼は呉羽に敬語を使う。よほど昨日の事が頭から離れないのだろう。 「いえ、しかし……」 「絵梨奈、コイツになんとか言ってちょ……」 堅くなに敬語を使おうとする彼に困り果てた呉羽は、絵梨奈に哀願する。 ふぅとため息をつき、絵梨奈が丸一日かけて説得するのだった。 教室の外からは呉羽を一目見ようとする生徒が絶えない。それは朝だけに限らず、休み時間毎に大群がやってくるのだ。 しかし、お昼休み―――― ある人物が、呉羽に向かって迷わずやってきた。
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