囚われの姫君は女番長

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「……閂 呉羽って、誰」 今まで騒がしかった教室を、静寂が支配した。 誰一人として喋る者はいない。息をするのさえ遠慮してしまう程の静寂。 教室のドア付近に寄り掛かり、腕を組みながら切れ長の目を教室に這わせる黒髪の少年…… たった一言。 ボソリと、聞こえるか聞こえないか際どい音量で発したにも関わらず、誰もがその声に、敏感に反応した。 ただ一人、呉羽を除いては。 「こっ、ここに!」 ガタッと盛大な音をたて、呉羽の隣で昼食を摂っていた絵梨奈が立ち上がり、張本人を指差した。 よほど緊張しているのか、絵梨奈の声はどこか上擦っている。それを疑問に思いつつ、呉羽は実に淡々と応える。 「あたしですけど、何か?」 ハッと息を飲む音がクラス分。 してはいけなかった事なのだろうか、皆が皆、冷や汗をかいている。 「く、呉羽!赤城会長だよ……!!」 「んえ?誰ソレ」 またしても息を飲む音。 キュッと口角をあげ、赤城がツカツカと歩み寄ってきた。 呉羽の前で足を止めると、満足そうに微笑む。 「昨日――――八杉の奴等を一人で殺ったんだって?」 「いえ、殺ってはいませんよ?」 あはは、冗談キツイなこの人。 と呉羽は笑った……のも束の間。 「おいで」 「ぐギョッ!」 襟首を乱暴に掴まれ、呉羽は半分宙に浮いた。そんなのお構いなしに赤城は呉羽を引きずっていく。 「ちょっと!いきなり……グフッ、なんなんですか!?」 「…………手合わせしてもらうよ」
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