囚われの姫君は女番長

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連れてこられたのは人気のない、裏庭。桜の木に囲まれ、呉羽はそこに立たされていた。 「いきなり何するんですか!?」 首元を抑え、ギッと目前の生徒会長を睨みつける。しかしその生徒会長というと、呉羽の事を楽しげにに見るだけ。 口元には、笑みが。 ジャリ……靴と砂が擦れる音だけが辺りに響く。周りには、誰もいない。 「別に……ちょっと確認しようと思ってね」 「確認……?」 「そう、聞けば君、昨日一人で何人もの不良を倒したっていうじゃない」 う……。 と呉羽は顔を歪ませた。 普通の学生生活を、普通の人のように。 そう、今まで願ってきた。 小さい頃から格闘技や護身術、殺人の仕方までみっちり教え混まれてきたのだ。 呉羽だって普通の女の子である事には変わりない。普通に友達が欲しいし、恋人だって作りたい。 それを、やっと叶えた筈なのに、今の状況はどう見ても呉羽の望む“普通”ではなかった。 裏庭に佇む二人。 一方は冷や汗で水溜まりをつくる程に真っ青。もう一方は楽しそうな笑みを浮かべている。 「だから試してみようと思って……君がどれだけ強い、のか」 「!!!!!!!」 ビュッと、何か重たい物が呉羽の頬を掠めた。ゴトリと背後で落ちる音がする。 ギリギリの所で避けた呉羽は、無意識のうちに喧嘩の構えになっていた。 「瞬発力……オーケー、上出来」 「ち、ちょっと!一体何がしたいんですか貴方は!?」
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