君の声

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  暗幕を下ろして背景を変える。   僕も主役の子も舞台裏に入って休憩を取った。   そうしていると、彼女がこっちに来て水を渡してくれた。 「ありがと」 「いえいえ。どう? 私の腕も中々のもんでしょ? ん、口かな?」   笑いあって、汗を拭きながら水を飲んだ。   その時、隣に座っていた主役が、俯いて息を荒げていた。 「大丈夫? とりあえず水、飲みなよ。休憩ちょっと長めに取ろうか。みんな、ちょっと背景ゆっくり目でいいよ」   と言ったところで、どさ、と重い音が舞台裏に響いた。   そちらに振り向くとその子は椅子から床へと倒れこんでいた。 「………おい! 大丈夫か!? 返事、できるか!?」   そんな必死の呼びかけにも荒い息が返ってくるだけ。   首元に手をやると、火傷するかと思ったほどの熱さが僕の手に返事をした。
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