君の声

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「……っ! 誰か! 保健室に! 早く!」 「………どうする……」   あの子は保健室に運び終わって、応急処置を施したので、保険の先生に任せておけば後は大丈夫だと思う。   でも、問題はそれにとどまらない。そうだ、主役がいなくなったのでは演劇が話にならない。   すでに10分は経ってしまっている。さっきから暗幕の向こう側からざわつきが聞こえる。   今さら、中止なんて言えば、どんなブーイングを貰うか分からない。  それだけですめば良いけど、来年からの文化祭に影響するかもしれないのが怖い。   後輩達に迷惑はかけられない。でも……一体どうすれば…… 「ねぇ」   突然、抱えていた頭の上から呼びかけられた。   頭を上げると、彼女が目の前に立っていた。胸には、台本を抱えて。 「台詞、暗記したよ」   その言葉の意味を理解するのに、数瞬使ってしまった。   そして、理解したとたん、僕は飛び上がるほどの喜びを覚えた。 「……任せても……いい?」   その言葉に彼女は満面の笑みを浮かべ、力強く頷いた。
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