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じゅうにがつ。十二月だ。そう、冬になったのだ。なんて、四季鮮やかな日本に住んでいれば至極当然の事を、さも不思議な出来事のように思う。
握り締めた機械の塊を見て、感慨も何もなく、ただ端から腐り落ちていきそうな思考ばかりが頭を過ぎった。
じゅうにがつ、にじゅうよっか。
ほうっと吐いた息は白い。握り締めた携帯電話に、光が宿る事はない。当たり前と言えば当たり前ではある。充電器なんぞ、当の昔に捨ててしまったのだから…
登録件数、一件。
何の事はないのだ。機種変更をした際に、以前の物はどうしますか?とにこやかに女の店員から問われ、反射的に引き取ってしまった所謂旧型。何世代も前の古い機種。そしてこの登録件数一件は、後から意図的に操作したもので。
そう。彼以外は要らない。むしろ必要ないのだ、と。心のどこかで感じていた。今だって、そうだ。こんなにも彼を欲している。
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