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むねのなかに、なにかが。
何かが巣喰っているのだと。
電池の切れた携帯電話にどうにかして命を吹き込もう、と躍起になってみるも、すぐに諦めてまた意味もなく弄ぶ。冷たい金属の感触が、ざらりと皮膚を焼いた。
数年来の付き合いだった。
最初の出会いはチャットで、数人の中に紛れて彼が居た。変な所で妙に気が合うのか、すぐに仲良くなれた。
平日の深夜か、土日にしか逢えない。もどかしくて何度も携帯の画面を更新しては、彼が入っていないか確かめるを繰り返す。
本当は実際に逢って、こんな冷たい機械を介してではない、現実での彼に話して、触れてみたかった。
実は女かもしれない、物凄い不細工か、自分では到底釣り合わないような男かもしれない。不安もあったが、期待の方が大きかった。
チャットでのアドレス交換は禁止されていたから、本当に彼と自分を繋ぐのはそこしかなかったのだ。
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