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「若者ー。死んじゃぁいかんよ。大志を抱かないと。いやぁ、あの演説は意味がわからなかった。なんせ英語だもの」
意味わからないって英語だからかよー! なんて自分で突っ込みを入れながら本気で笑っている姿は、僕から見ても……痛い。
そんな彼女を見ながらこの人の理由を考えた。
ここは俗に言う、自殺の名所ってやつだ。
名所になる理由なんて知らないけど、(死にやすい、なんて理由なわけないし)そこにいるということは、彼女も自殺願望があったってことだろうか。
そして、やっぱり踏み切れずに戻ろうとしたところで僕を見つけて――
なんだ。躊躇した人が、まだ死のうとしてる人を救ったフリして自分を救おうとしてるだけか。
そう思うと……なんだろう。
妙に粘っこい笑いがこみ上げてきた。
「……そういうあんたも、死にたかった口じゃないのか?」
そう言った瞬間、彼女は抱え続けていた腹を解放して、すっと僕を見据えた。
――何でだろう。
僕は、少し、それが嬉しいと感じてしまった。
「自分で自分を殺すこともできないような人に、大志なんて抱けないよ。英雄って奴らは得てして自己犠牲したがりの自殺願望の塊なんだから」
もっと、この人を怒らしてみたい。
怒らし続けたい。
そうすれば……
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