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その部屋には、大小様々な機械が至る所に置かれていた。
辺りは薄暗い。
大きな机に無造作に置かれたいくつものパソコンには電源が付いていて、ディスプレイが青白く光を放っていた。
床には、様々なコードやケーブルが縦横無尽に絡まりあっている。
伸びた先は機械に繋がっていたり、壁の穴の端子に接続されていた。
何かの端子なのか、金属の部品も多く散らばっている。
機械の稼動する低い音が静かに響く中で、かすかにパソコンのキーボードを叩く音がしている。
白衣を着た男が床にうずくまり、パソコンの画面を見ながら指をせわしく動かしていた。
年の頃は50過ぎといったところだろうか。
黒縁の眼鏡をかけ、茫々と伸びた髪とひげは、薄汚れてはいるが金髪だった。
目の下のくまはくっきりと大きく、うっすらと汗が浮いている。
土のような顔色は生気が全く感じられない。
しかし何よりも、画面を凝視する、悲愴ささえ浮かぶその必死の形相が、男を異様な雰囲気にさせていた。
男の見つめるパソコンの上に、大きなビニールのようなものが天井から吊るされていた。
透明な袋状のそれは、2枚のビニールが隙間無くくっ付き、間に何かを挟んでいるので全体がでこぼことしている。
どうやらそれは、ものを真空状態で保存する目的で作られているようだった。
中に入っているのは、黒い毛並みの生き物だった。
四つ足で大きく、がっしりとした体のその動物は、しかし躍動する事などありえないかのように、無言のままビニールに「パックされ」ていた。
男のいじっているパソコンから伸びた何本ものコードは、その動物の体の色々な部位に、ビニールに穴を開ける形で繋がっている。
男の額からつうっ、と一筋汗が垂れた。
無言のまま服の袖で拭う。
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