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そこは美しい海岸だった。
白い砂浜と、空の色を写し取ったような濃い青の海が穏やかに波を作っていた。
空にはどこまでも澄んだ青色が広がり、太陽を反射させた波が白く輝いている。
緩くカーブを描いて遠方まで長く伸びる海岸線は、人の気配がなく、揺れる白波だけが浜に寄せていた。
静かなその浜に、白砂に黒い点を穿つようにしてぽつんと1つ、何か動いているものがいる。
それは一見してまるで大きな樽のような、寸胴のシルエットだ。
動く度、かたかた、と小さく音が聞こえてくる。
ベルトが巻かれたタイヤの上に、金属製の太い円柱が乗っているような、金属の塊だ。
子供ほどの大きさで、左右に蟹のハサミに似た長い腕が付いている。
円柱の上部に付いた丸いカメラがゆっくりと動いて、波打ち際の砂浜を映し出していた。
カメラが、波打ち際に半分砂に埋もれた木切れを見つけ、動きを止める。
ロボットはかたかたとキャタピラを動かして前進し、目の前に落ちていた小枝をその金属の腕で拾い上げた。
人間で言えば腹部、円柱の中央部にある蓋がぱか、と開き、小枝をそこに放り込む。
そのロボットは、そうして海岸の漂着ゴミを探して回収してまわっているのだった。
タイヤを動かし、進もうとしたロボットのカメラが、その先にまた何かを捉える。
それは、彼が今まで見た中で一番大きなゴミだった。
砂浜に打ち上げられたようだが、あれでは回収ゲージに入りきらない。
カメラでスキャンした所、どうも有機物であるようだった。
ロボットは、その「ゴミ」、倒れている少年にゆっくりと近づいた。
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