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「シュバリエだ」
画面の顔はそう名乗った。
「万能の騎士という意味を持つ」
体を横たえたまま首だけを動かし、レクは画面に映る不思議な顔を眺めた。
画面が作りだした青の濃淡で表されたその顔は、無表情で瞳の奥は見えない。
生き物のような、しかしまるで生気というものは感じられない。
「あ……あなたは、人間?」
「いいや。私は人工知能、ロボットだ」
映し出された口の部分が揺らめき、顔は答えた。
「ロボット……?」
「人間に作られた機械だ。この国の通常の自立機械よりは高次な存在ではあるが。私はこの国の維持管理を任されている電子頭脳だ」
男とも女ともつかないまるで特徴の無い顔と、これもまた美しいとも聞き苦しいとも言い表せない声だった。
表情といえるようなものは全く感じられず、ただこちらを見ているらしい、という事だけわかる。
「人間」というものを表現するのに、目や鼻、声などのパーツをただ集めただけという感じだ。
シュバリエの説明はいまひとつ理解出来ないが、彼(あるいは彼女かもしれない)の、なまじ人間を模しているためにむしろ色濃く感じられる無機質さは、レクも感じ取ることが出来た。
人間の顔をした、人間ではないもの。
いや、生き物ですらないもの。
(人の真似をしている機械)
そう思った。
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