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体を起こそうとして、レクは軋むような痛みに思わず顔を歪めた。
「いっ……」
体中のあちこちが悲鳴を訴える。
同時にぐらりと、目まいがした。
「急に起き上がると貧血を起こすぞ。しかし、あと数日は寝ていた方がいい。この国の医療水準は極めて高いが、君は一度仮死状態にまで陥った」
シュバリエが言った。
力がうまく入らず、微かに浮かした腰をベッドにまた沈める。
起き上がるのを諦めて、レクは軽いため息を吐いて白い天井を眺めた。
(……静かだなあ)
辺りは相変わらず人の気配が無い。
開いた窓の白いカーテンが風で揺れている。
窓から見える空はただ青い。
柔らかい風が頬を撫でた。
レクは自分が別の世界に来てしまったような気がした。
これ程までに穏やかな空気に触れたことは、今まで一度も無かったからだ。
いつのまにか、レクはまた眠りに落ちていた。
画面の影が、寝息をたてて眠っている少年を見ている。
何も言わず、眺めている。
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