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「じゃあ、お兄さんは昔に戻りたいって全く思わないんですか?」
女の子の言葉がやけに大きく聞こえた
大人になりたいと思う俺は確かによく、昔に固執する
「人が大人になる瞬間ってどんな時だと思います?」
「年とりゃ大人だろ。…心はどうであれ」
「ではその心が大人になる瞬間は?」
「知らねぇよ。意識したらじゃねぇの?」
心なら俺はとっくに大人になっているつもりだ
「未来を見るのを止めた時、人は大人になるんだと思います」
女の子の声は震えていた
「過去を羨み、現在をどう生きるかしか考えない。まだ未来はあるのに、見ようともしない。それが大人じゃないんでしょうか?」
俺は何も言い返せずに天井を眺めた
やけに遠く感じる
「いいんじゃないでしょうか?未来を見ようとする子供の心があっても」
「子供の癖に偉そうに…」
「子供だから偉そうに言うんですよ」
女の子の声の震えはいつの間にか止まっていた
顔は見えないが笑っている気がした
俺の思う大人の定義
彼女が思う大人の定義
どちらも間違ってはいない
ただ俺の考える【大人】に欠けているもの
それが分かった気がした
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