夏空

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夏空

私の地元は古くからの漁師町だ。通学路も海岸線に沿っており、自転車で片道5kmの道を通っていた。海からの風は塩味がした。梅雨の隙間から零れる空は夏めいており。大好きな青の季節に、私は浮かれていた。 浮かれていた理由はそれだけではない。夏休みの間、バイトを許可されたのだ。 私の学校は、バイトをしてもいい生徒は成績優秀者に限られていた。バイトをしたかった私は、一学期の中間・期末テスト共にクラスの10位以内に修めた。 母のコネで近所の店のバイトが決まり、夏休みの計画はバッチリだった。一学期の期末テストも終わり、クラス全体がはしゃぎモードになった。家では、高校受験を控えた妹がいたので明るい雰囲気ではなかったが。それでも、夏は良いことばかりを期待してしまう。しかし、この年を最後に私は夏が嫌いになった。
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