異世界へ

5/9
14494人が本棚に入れています
本棚に追加
/295ページ
  「…なんか、面倒見いいし」 「面倒見?俺様が?」 「そうそう。オレサマが」 「…まあ、長男だからな」 「へぇ」 遠藤は照れながらそう言った。 やっぱり。 「五人兄弟の長男だぜ?あー、お前にもこの苦しみを味わせてやりてーぜ…」 「味わいたいね、ぜひ」 「お前…弟の面倒がどんなに大変かわかってねぇな!?」 「わかるよ?弟いるから」 すると遠藤が、一瞬きょとんとした。 「…マジか?」 「…何、その疑いの目は」 「いやー、なんか兄貴とかいてさ、可愛がられてるタイプじゃん?お前」 「…」 俺は、ハッとした。 俺は今まで、アンが死んでから、どこと無く自分でアンを演じていたからだ。 確信はなかった。 …でも、今わかった。 やっぱり俺は…アンの死を受け入れられないのか。 くしゃりと、前髪を掴んだ。 「どんな奴なんだ?まあお前に似て、生意気だろうけどな!」 「…うん。俺にそっくりだ」 「ふーん。俺様の弟達はな、今もう元気でなー! 遊んでやったら体力がもたねぇんだわ!」 「へぇ」 遠藤は、楽しそうに弟や妹のことを話す。 どこで遊んだときに何をしたとか、何番目の弟は何が好きとか、全部。 あんまり楽しそうに話すもんだから、俺は寝ずに、遠藤の話をちゃんと聞いていた。 誰かの話を最後までちゃんと聞いたのは、7年ぶりだった。 .
/295ページ

最初のコメントを投稿しよう!