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「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」   マイクを介さずともコックピットから声が漏れる程の咆哮をあげながら、竜矢は炎皇のマニュピレーターをメインモニターに映る「それ」に向かって伸ばす。   「これでも、被ってろ!」   そして、マニュピレーターが「それ」を掴むと同時に機体を反転、右手を先程の一撃と同じ要領で後ろへ振り抜く。   ──バサァッ!!   半分程が地面に埋もれていたため、盛大に砂埃を上げながら「それ」は大きく広がった。   「…………っし!」   そして、「それ」が完全に広がりきる前にマニュピレーターを開き、同時に後方へとバーニアを噴射、距離をとるとそのまま更に空中で反転、一気にその場から離脱した。   ……竜矢が使った「それ」とは、恐らくは建設中のビルか何かの資材を包んでいたのだろう。アームス一機くらいなら容易に覆い隠せそうなビニールシートだった。それを後方へ、つまり「化物」へと投げることにより、目眩ましとして使ったのだ。   「…………フゥ」   そして、竜矢の作戦は確かに成功………したかに、思えた。   「……モウ、オワリ?」   瞬間、竜矢は全身に何か冷たいものが駆け抜けるのを感じた。   「……そん、な………!?」   既に先程の場所からは随分と距離があった。 にも拘わらず、竜矢の目の前には機影があった。そして、その姿を見た瞬間竜矢は直感した。 今目の前にいる、この機体が、まさに『影』のような闇を孕んだこいつこそが、   「………化物………」   さっきまで竜矢の背後に張り付いていた、「化物」だと。         ◆   「……ソレダケ?」   此方に向かってビニールシートを投げる紅い巨人を見て、黒いアヴェレージから発せられた言葉は落胆の色を濃く現していた。   「ツマラナイナァ……」   失望。失望失望。失望失望失望。失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望失望─────ッ!   「ナラ……モウ、シンジャエ」   その言葉の余韻が消え去るより速く、既にその場に黒いアヴェレージの姿は無かった。         ◆   黒い巨人……竜矢がそれを認識するより速く、その機体は竜矢の懐へ潜り込んできた。   「………ヒッ!?」   一瞬、メインモニター越しに「化物」と竜矢の視線が交わり……   コックピットが、閃光に包まれた。
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