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───ギャリィィンッ!!
金属と金属のぶつかり合う音が、夕闇に染まる街に響き渡る。
屋根が剥がれ落ちた家、巨大な穴の開いたビル。目につく建物は全て崩壊している街の中、火花を散らしてぶつかり合う人影が2つ。
『うおぉぉぉぉぉっ!!』
影の1つは、巨大な剣を握り、紅蓮の鎧に身を包んでいた。
『……………っ!!』
もう1つの影は、2本の短剣を逆手に構え、灰色の鎧に身を包んでいた。
一度距離を取り、再びぶつかり合う様は、端から見れば踊っているようにも見える。
その踊るようにぶつかり合う影は、しかし人のように見えて人ではなかった。
何故なら、その影は人より遥かに巨大な体躯を持っていたのだから。
……その影の名は人型汎用決戦兵器、通称〔Arms(アームス)〕と呼ばれる、人類が生み出した自己防衛の最終手段である。
◆
『────そこまでっ!』
夕闇に染まる廃墟に機械的な声が響く。そして次の瞬間、そこにあった廃墟が一瞬で消滅した。
『お疲れ様です。これで本日の模擬戦は全てのメニューが終了しました。後の予定はそれぞれの担当者の指示に従ってください』
遮蔽物の一切無くなった元廃墟は巨大な体育館のような空間になっていた。
そして、その空間の中心に立つアームスが二機。
巨大な剣を握った紅蓮の鎧のアームスは、様々な軍事企業で開発されたアームスがまず配備される、主に実戦でのデータ収集を目的とした試験配備軍。通称試軍でも比較的新型の機体、型式番号〔Type-01.00〕"ブレーダー"と呼ばれる機体である。
このブレーダーには搭乗者ごとにカスタムが施されていることが多く、主に部隊長やエース専用機として運用されていることが多い。
元は灰色の装甲を紅蓮に染めたこのブレーダーもまた、専用機である。
そして、紅蓮のブレーダーの正面に立つアームスは試軍でのデータを元に改良を施し、量産された機体が配備される自衛隊とは異なる国家直属の軍、通称正規軍の主力機、〔proper013〕"アヴェレージ"と呼ばれる機体である。
『今回の模擬戦は非常に学ぶことが多かった。また宜しく』
アヴェレージのマニュピレーターが握手を求める形で紅蓮のブレーダーに差し出された。
が、
『…………………』
紅蓮のブレーダーはそれに答えることはなく、踵を返して歩き去った。
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