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「しっかし……凄いわねー…」
近くにあったコンテナに腰掛けたフォルナが『炎皇』を見上げながらそう呟いた。
「………何がだ?」
フォルナと同じようにコンテナに腰掛け、先程フォルナに渡された(より正確に言うならば押し付けられた)弁当から顔を上げて竜矢は聞いた。
「だって…アームスのプロトタイプが開発されてから……たった2年で、あの歩くのが限界だったプロトタイプから、このブレーダーや私のキャノミラージュまで進化したのよ?」
そう、アームスのプロトタイプが開発されてからの人類の進歩は確かに異常なまでの速さだった。
米国のある企業がプロトタイプを発表し、それを追いかける形で様々な企業が発展機を開発していき、最初のプロトタイプの発表から約2年、今や人類の主力兵器は戦車や戦闘機ではなく、人型機動兵器へと完全に移り変わってしまったのだ。
そして、その2年間で変わってしまったのは兵器だけではなかった。
世界は、地球上の全ての国家の代表によって納められる統一国家『ユニフィ』となっていた。
この統一国家設立の背景には宇宙人が攻めてくるのに備えている等、一時期様々な憶測が飛び交ったが、結局真実は闇へと紛れてしまっていた。
「……確かに、な。まさか地球上の国が全部纏めて1つになっちまうなんて想像もしなかったぜ」
竜矢はあまり興味も無さそうにフォルナの弁当を掻き込みながら答えた。
「まぁ、『統一国家』なんて偉そうなこと言っても結局昔の国の軍とかが残ってちゃ、意味無いわよねぇ」
凄い勢いで弁当の中身を平らげていく竜矢を嬉しそうに見つめながら、フォルナは小さく溜め息をついた。
……そう。『統一国家』とは言っても各国の軍は統一された訳でも解散した訳でもなく、そのまま残っていた。
結局、下手に統一などしてしまった為に指揮系統が混乱し、それぞれの軍がそれぞれの軍の指揮系統に従って行動した結果、元の鞘に収まったのだ。
仕方がなく統一国家首相達は、各国の軍から精鋭を集めた軍、『試験配備軍』と『正規軍』を作り出した。
「で、私達は常に前線で戦闘しなくちゃいけなくなったのよね。……今の地球に『前線』なんて、無いのにね」
「仕方無いだろ。全世界が統一されりゃ、そりゃ戦争する必要が無くなるんだからな。……ま、それが唯一、統一国家のメリットか」
静かな格納庫に、二人の溜め息が響いた。
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