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「……?」
あっという間にフォルナから渡された弁当の中身を食べ尽くした竜矢は、周囲の様子がおかしいことに気が付いた。
「何かあったのかしら……?」
フォルナも異変に気が付いたらしく、コンテナから立ち上がり周りの様子を慎重に窺っていた。
普通、模擬戦などの直後の格納庫は整備班が機体整備の為に走り回っているため、騒がしいことが多い。しかし、今は整備班どころか、自分達以外に人がいなかった。
「何か……あったのか?」
普段とは違う異質な空気になにか危機感のようなものを覚えた竜矢は、コンテナから立ち上がると周囲を見回しているフォルナへと近付いた。
「さぁ…警報は鳴っていないみたいだけど」
そう言うとフォルナは竜矢がコンテナの上に放置していたヘッドセットを拾い上げ、本部への通信用の回線を開いた。
『こちら本部。層崎中尉、どうなさいましたか?』
ヘッドセットからは若い男性の声が聞こえてきた。
その声は随分と落ち着いていて、今の状況とは些か不釣り合いだった。
「ちょっと、格納庫に整備班が居ないのはどういうこと?」
フォルナはそんな相手の態度を不審に思うことなく、今の状況についてを問い質そうとした。
が、
『第二種警戒警報発令。各員は所定の持ち場に戻ってください。また、パイロットは自機にて待機。繰り返します。第二種警戒警報発令……』
格納庫に鳴り響く警報とアナウンスにより、フォルナの言葉は掻き消されてしまった。
「なっ、第二種だと!?」
流石の竜矢もこれには大声をあげてしまった。何故なら第二種とは、『敵対勢力』がここ、試軍の本部基地に向かっている時…より正確に言うなら、本部基地に危険が迫っている場合にのみ、発令されるものだからだ。
「リュウヤ……どうするの?」
フォルナが不安そうな顔で竜矢を見詰める。だが、今のこの世界では敵対勢力などは居ないのだ。竜矢にも何をすれば良いのかなど分かりはしないだろう。
「とりあえず……お前も自機で待機だろ…機体はあるのか?」
混乱しつつも竜矢がそう言うと、フォルナは小さく頷き、自機のハンガーへと走って行った。
「一体なんなんだってんだ……チクショウ……」
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