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「………」
竜矢は『炎皇』のコックピットで目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をした。
『……リュウヤ』
すると、コックピット正面のメインモニターに不安そうなフォルナの顔が浮かび上がった。
『何が……起こってるのかしら…』
「………」
それに答えるほどの余裕は竜矢には無かった。
本来あり得ないはずの第二種警戒。それが、たったそれだけの事実が、竜矢の精神をゆっくりと削っていくのだ。
『まさか……戦争なんてことは無いわよね……』
それはフォルナも同じらしく、オープン回線でフォルナはずっと竜矢に語り掛けていた。恐らく話すことで不安を紛らわせているのだろう。
「戦争なんて……今のこの国じゃ起きないだろ…条約だって……」
多少落ち着いた竜矢が、フォルナを少しでも安心させようと口を開いたのと、
────ズガァンッ!!
耳を貫くような爆音が響いたのは、ほぼ同時だった。
「……っ!?」
『警戒体制を第二種から第一種に移行、パイロットは直ちに出撃せよ。繰り返す。警戒体制を────』
次いで響き渡るアナウンス。
再びメインモニターに浮かび上がったフォルナの顔は、驚愕と恐怖が入り交じった表情に染められていた。
『リュウヤ……!?』
「分からない!とにかく出るぞっ!!」
『でもっ!!なんで!?なんで第一種なの!?なんでなのよぉっ!!』
パニックになっているフォルナを見て、竜矢は思わず舌打ちをした。
その舌打ちには、数年間ずっと背中を預けていたパートナーが晒す醜態に対する失望の意味の他に、竜矢すら気付いていない想いが込められていた。
「目ぇ覚ませフォルナ!!こんなとこで死にたいのかよっ!?」
『─────ッ!?』
竜矢の一喝に我に返ったフォルナは、先程竜矢がしたように目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をした。そして、次に目を開いたときには先程までの恐怖に怯え、パニックになっていたフォルナは消え、『兵士』としての表情になっていた。
『……ごめんなさい。もう大丈夫よ。……行きましょう』
落ち着いた様子のフォルナを見て、竜矢は安堵の溜め息をついた。これからは模擬戦などでは無い、本当の命を掛けた戦いが始まるのだ。相棒があんな状態のままでは不安にもなっただろう。
「……よしっ!出るぞ!」
しかし、竜矢とフォルナを迎えたのは過酷な現実だった。
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