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「……どうなってるんだ……?」
炎皇のメインカメラが捉えた映像を見ながら、竜矢は呟いた。
「敵どころか…味方すら居ないのは……流石に……」
そう。フォルナと別れた場所から随分と離れたにもかかわらず、敵影どころか味方機すら見つかっていないのだ。
「…戻るか」
もう一度辺りを確認した竜矢はフォルナと別れた場所へ戻ろうと炎皇の足を踏み出した。
が、その足は踏み出された一歩目で止まってしまった。
「馬鹿な…いつの間にそんな距離まで!?」
一歩目を踏み出した直後、さっきまで一切の反応を示していなかったレーダーに突然、反応があったからである。
「真後ろ……ちっ、マズイな」
言うと同時、竜矢は炎皇の右手に構えた大剣を静かに構え直すと、腿部のブースターを使い驚異的なスピードで機体を反転、同時に構えた大剣を振り抜いた。
「………な、なんだとっ!?」
竜矢の放った一撃はそのスピードや放つ前の挙動、その他全てにおいて完璧とも言える精度だった。
しかし、背後の反応は消えてはいなかった。
いや、それどころかなんとレーダーに映る反応はさっきまでと変わらず竜矢の背後に敵が居ることを示していた。
「馬鹿な……機動でブレーダーを…いや、炎皇を上回っているのか……!?」
信じられないとでも言うように竜矢は低い唸りを上げた。
当然だ。竜矢の機体『炎皇』は機動戦最強と呼ばれるブレーダーを竜矢の特性に合わせ更に軽量化、こと高速機動においては戦闘機すら凌駕する性能を誇っているのだから。
「まるで『影』だな……」
竜矢は自分が冷や汗を流していることに気が付いた。
当然だろう。自分の「人間離れ」していると言われた機動を超える機体が現れたのだ。
「人間離れ」しているものを超えるのは、正真正銘の「化け物」だ。あくまで「人間」である自分ではまず勝ち目は無いだろう。
「……くっ…何故仕掛けてこない……?」
背後に敵が居る恐怖といつ攻撃が来るか分からない恐怖。
二つの恐怖に耐えながら、竜矢は如何にしてこの『影』のような「化け物」から逃れるか、ただそれだけを考えていた。
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