鏡合わせ

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どこか遠くで声がした。それは、風になりかけた時と同じように、はっきりとは聞こえなかった。けれど、声は呼んでいる訳ではないと、未来はまた深い眠りにつこうとした。 突然、頭の中で怒鳴り声がした。それは、微睡(まどろ)みの中にいた未来を起こすには、十分過ぎる声だった。 未来が驚いて飛び起きると、見た事もない部屋に未来は居た。 「ここ、何処?」 周りを見回してみても誰もおらず、これと言って特別な物もない。部屋にあるのは、未来が寝ているベットと、小さな机と椅子が一つ、そして大きな窓という小さな部屋だ。 未来は俯いて、自分の服が変わっていることに気付いた。 未来は、ゆったりとした白いネグリジェを着ていた。そこから突き出ている手足を見て、未来は自分の変化に気付いた。手足は細くなり、白人のように色が白い。髪は恐らく腰より長く、黒髪ではあるが輝くような光沢がある。 未来は何とか落ち着こうと、自分が置かれている状況を整理してみることにした。 「え~と、私は儀式を受けて、それから痛くて倒れて………どうなったんだっけ?」 未来は頭を抱えた。これでは全くわからない。 すると、隣りの部屋から怒鳴り声が聞こえた。それと同時に、頭の中に同じ怒鳴り声が響く。 「痛っ!」 激しい頭痛が未来を襲う。 「誰か!」 未来は悲鳴を上げた。 「未来!」 勢いよく扉が開かれ、入って来たのは見知らぬ男だった。 「誰?」 首を傾げる未来に、男は言った。 「誰って、俺だよ俺!香芝公太だよ!」
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