401人が本棚に入れています
本棚に追加
どこか遠くで声がした。それは、風になりかけた時と同じように、はっきりとは聞こえなかった。けれど、声は呼んでいる訳ではないと、未来はまた深い眠りにつこうとした。
突然、頭の中で怒鳴り声がした。それは、微睡(まどろ)みの中にいた未来を起こすには、十分過ぎる声だった。
未来が驚いて飛び起きると、見た事もない部屋に未来は居た。
「ここ、何処?」
周りを見回してみても誰もおらず、これと言って特別な物もない。部屋にあるのは、未来が寝ているベットと、小さな机と椅子が一つ、そして大きな窓という小さな部屋だ。
未来は俯いて、自分の服が変わっていることに気付いた。
未来は、ゆったりとした白いネグリジェを着ていた。そこから突き出ている手足を見て、未来は自分の変化に気付いた。手足は細くなり、白人のように色が白い。髪は恐らく腰より長く、黒髪ではあるが輝くような光沢がある。
未来は何とか落ち着こうと、自分が置かれている状況を整理してみることにした。
「え~と、私は儀式を受けて、それから痛くて倒れて………どうなったんだっけ?」
未来は頭を抱えた。これでは全くわからない。
すると、隣りの部屋から怒鳴り声が聞こえた。それと同時に、頭の中に同じ怒鳴り声が響く。
「痛っ!」
激しい頭痛が未来を襲う。
「誰か!」
未来は悲鳴を上げた。
「未来!」
勢いよく扉が開かれ、入って来たのは見知らぬ男だった。
「誰?」
首を傾げる未来に、男は言った。
「誰って、俺だよ俺!香芝公太だよ!」
最初のコメントを投稿しよう!