木曜日

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視界はきらきらしていて、何処かみずみずしい。 気分は晴れやかで、顔はほころぶ。 つまり、「好き」なのであった。           赤く夕焼け、 日誌を書きながら。   沈黙さえも心地よい。    野球部の声、 何処からかラッパの音。   談笑、 笑い声。   淡々と書かれてゆく文字の羅列。   《皆きちんと授業に取り組んでいました。》                    「言葉にしたら、それは無くなる気がする」    彼女は言った。     感情だったそれは、口にすれば一気に冷えきってただの「意味」になってしまう。 彼女はそう言った。   ──そんなことないよ──     そんな一言さえ言えなくて。 言葉につまって、苦く笑った。   彼女はただ、いつもの様にくしゃりと笑うだけだった。  
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