最初で最後の人形劇

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    漂う匂いは硝煙の香と弾薬の臭。 見える景色は烈火の炎とひしゃげた鉄屑。 数時間前はビルが建ち並ぶ街だった場所が、今では廃墟となっていた。 「ひどいな……」 そんな光景をモニター越しに見ながら1人のパイロットがつぶやいた。 瓦礫の街に佇むのは身の丈の4倍ほどの大きさをした、傷だらけの機械仕掛けの人形──ライト・アーマ。白を基調としたカラーリングで、どこか生物的なフォルム。両手には頑丈そうな籠手が備わっている。 パイロットがコンソールを操作すると、後部ハッチが開き、搭乗席が後ろにスライドした。 光がパイロットの顔を照らした。20そこそこのまだ若い男だ。 「やっぱりひどいな……瓦礫ばっかだ」 パイロットは搭乗席を元の位置に戻した。モニターに光がはいり、周囲の景色が映し出される。 「よし、まだ……動くな」 ライト・アーマ──紫電改は赤く塗装されたショルダーを翻した。 汚れた大地を踏みしめ、唯一残った武装である拳銃と分子振動ソードを構える。 彼はとある事情で原隊である直属部隊、通称(不死身の赤軍)からはぐれていた。 「さてと……弾薬もないのにこんなとこにいてられるか」
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