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内心、彼は焦っていた。
ついさきほどまでこの地は戦場、しかも両軍主力がぶつかり合う激戦地だったのだ。
そのため、彼みたいに落伍してしまった味方もいれば敵も多数存在する。そんな敵と遭遇してしまった日には泣くに泣けない。
パイロットはモニターを見ながら、慎重に紫電改を歩ませた。
合流ポイントはちゃんと知っている。しかし、知っているだけではいけないのだ。
合流ポイントへ行くルートは無数にある。が、それは歩兵の場合のみ。全高6メートルほどの紫電改が移動するとなると、自然とルートは決まってしまう。
道は3つ。
1つは近いが危険性が高い。もう1つは遠回りだが安全。残る1つは比較的危険だが近い。
このパイロットは3つ目の道を選んでいた。理由は簡単、武装とエネルギー面から考えてのことだ。
武装はさっきの通り、拳銃と高周波振動により分子結合を瓦解させる分子振動ソードのみ。たったこれだけの装備でむちゃはできない。
エネルギー面ではライト・アーマ(LA)の動力源は電力収束装置(ECD)の残留電力が乏しいからだ。
アスファルトに亀裂が走る道路を歩きながら、彼は小さくため息をついた。
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