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其処は、他ならぬ自室だった。
「……これ、は!?」
驚く奈月。
「驚く事は、無いだろう……!? あんた達が黙認した、抜け荷の阿芙蓉さね……!?」
何時の間にやら忍び装束姿のお凛が、奈月の後ろに立ち塞がって居た。
「な、……!?」
何奴と叫ぼうとしたが、口を塞がれた上、奈月は喉仏の下を斬り裂かれる。
「…………!!」
声帯に息が届かず、声にならない。
「大声を出されちゃア、困るんでね……!? 喉を軽く斬らせて貰ったよ……!?」
淡々と告げるお凛。
奈月は帯びている脇差しを抜いて振り回すが、武芸の呼吸が出来ずに息が上がる。
「アンタ等、欲張り過ぎだよ……!! 分不相応って言葉、知ってるかい……!?」
お凛の右手が一閃されると、二枚の花札がそれぞれ左右の肺を貫通した。
「…………!!」
肺に穴が開き、吸えども吸えども奈月は息が出来なくなる。
「苦しいかい……!? だけどね……!! アンタ等が味わった旨味たっぷりの汁……!! 吸われた方の苦味は、こんなモンじゃア足りないンだよ……!!」
抑揚すら感じさせない、お凛の低い声。
そして、薄れ行く奈月の意識。
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