ボタン。

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ただ一つ、想像できるとすれば、八木沢が俺のシャツのボタンをかけているところだ。 テニスをしているときなら、俺は八木沢のことは何でもわかる。八木沢の視線、八木沢の呼吸、八木沢の鼓動、すべてが感じられる。どう動き、どう走り、どう打つか、自分のことのようによくわかる。 だが、それ以外のことは何も知らない。 知っているのは、八木沢の指が細くて長くて器用なこと、制服のシャツのボタンを上までかけていること、それだけだ。
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