始まりの朝

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このままじゃ、バスに乗り遅れる―― 彼は正直焦っていた 「ここを通るしかないのか……」 今の彼にはそれ以外選択肢はなかった。 ため息を一つハァ、と洩らすと彼は体を横にし細長い路地に入っていった。 やっとのことで路地を抜けたかとおもうと、お次は自分の身長よりも高い塀。 手に持っていた鞄を口にくわえて、路地の壁を両手、両足を巧みに使い、塀を越えた。 そして、他人の家の庭を横切ると、目の前にはバス停。 見事にショートカット成功。 信号の向こう側を見ると、バスが来るのが見えた。 「間に合った‥‥」 ほっと胸を撫で下ろす。しかし彼の制服の袖や膝は土埃で白く、茶色くなっている。 「……はぁ‥」 汚れてしまった制服をみて、軽く項垂れる。 目の前にバスが停まり、車内に入るまえに彼は制服の埃を手で二、三回叩き、いつもの重い足取りでバスに乗り込んだ。
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