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栢山葉水が江戸で生活をはじめて一年たったのは安政五年(1858)四月中旬のことであった。
中肉中背で薄汚れた衣服を身につけている二十代の侍であるが、当人は日々の生活を楽しんでいるようだ。
この一年間で食うためならどんな仕事も懸命にやってきた。もちろん真っ当な仕事であるが、船荷を運んだり、火事場の後片付けの人足等様々な経験をした。 故郷の方言、訛りも世間に揉まれたお陰なのか、江戸市中の人々が使っている標準の言葉も発することができるようになった。
葉水は、住んでいる長屋を颯爽と出た。腰には大小をさしていたかに見え
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