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「えっと、終わりました」
一瞬だった。
練習の時と違ってみんな見てて、ただ無心に、弾くことだけに集中してた。
「良かったよ。途中間違えてたけどな」
先生は笑いながら言う。
そうだったんだ、気がつかなかった。
私はすみません、と言い席についた。
先生は少し考えた後、「お前も一応やってみるか?」と彼女に問いかけた。
胸がずきっと音をたてた気がした。
やっぱり先生は、
「いや、でも」
そう言って彼女は困ったように笑いながら私を見る。
それが少しわざとらしく見えたのは、無意識のうちにわたしが彼女を妬んでいるから?
自分の中の汚い感情が、胸を支配していく。
「え、全然いいよ」
私がそう言うと彼女はそっか、と言い、安心したようにピアノと向き合った。
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