3兄弟

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浅海ヶ丘高等学校。小中高大とエスカレーター式の学校である。 そこの二年生である篠原翠〈シノハラ ミドリ〉は放課後、教室の一番後ろの窓際という素晴らしいポジションの机にだらけながら、近所のスーパーの広告を眺めていた。彼は今、特売の玉葱を買うべきか否か悩んでいる最中であった。 そんな彼の背中に、青年が一人のしかかってきた。 「みぃちゃん家は今日の晩ご飯なぁーに?」 青年は翠のクラスメイトである新堂晃人〈シンドウ アキヒト〉である。彼の登場に若干苛立ちを感じた翠は、頭上にある顎に目がけて下げていた頭を勢い良く上げた。 「みぃちゃん言うな」 「ォグッ!?」 己にも多少のダメージはあるが、それ以上のダメージを与えることが出来たようで、晃人は顎を押さえながら声にならない叫びを上げている。そんな彼を心配することもなく、翠はとりあえず晃人の質問に答えてみる。 「ぃや、家に人参とじゃが芋あるから、この特売の玉葱買ってカレー作ろうかと…肉もあったと思うし」 「シチューは?」 目の端に涙を溜めながらも、どうにか復活したらしい晃人が素朴な疑問を口にした。 「シチューと言えばコーンとマッシュルーム、そしてパンも必要だろ?ご飯残ってんのに勿体ない」 ムスっとした顔で話す翠に、晃人は頷くしかなかった。 三人だけで生活し始めてから、家のことは長男である翠が自ら率先して行っていた。毎日朝5時には起きて洗濯をし、三人分の朝食と弁当を用意し、それから学校という高校生にしては結構ハードな朝を過ごす。そして学校が終われば買い物をして帰り、洗濯物を片付け、夕食を作る…これが翠の青春時代真っ盛り中の過ごし方。
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