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皆が茫然としている中、翠に抱きついている人物は甘えるように擦り寄る。
「お兄ちゃーん!一緒に帰ろ♪」
本来ならこの教室で見るはずのない中学校の制服を纏い、幼さの残る顔に満面の笑みを浮かべている少女。
言わずもがな、彼女は篠原家の長女であり3兄弟の末っ子である茜〈アカネ〉だ。
中学2年生である茜は、それ相応の外見をしており可愛らしい。
「茜、今日部活は?」
「今日は先生いないからお休みなの!ね、一緒に帰っていいでしょ!?」
葵が犬ならば、茜は猫といった感じだろう。
一言一言の語尾にハートが付いていそうな程翠にベタベタと甘えていると、おそらく茜に蹴られたのであろう葵がゆらりと立ち上がり、茜を翠から引き剥がす。
「ぃってーなクソが!?大体なぁ!翠は俺と買い物して帰んだよ!!」
「はぁ?マジうざいし。あんたみたいなデカ物が、お兄ちゃんと一緒にいていいと思ってるわけ?」
行き成り勃発した兄弟喧嘩に頭を抱えた翠の肩に、晃人が哀れむように手を乗せた。
「晃人…」
「翠……玉葱売り切れるぞ」
晃人の言葉にハッとし、急いで荷物をまとめた翠は全力で走りだした。
「あぁああ!!しかもタイムサービスも危ういし!!」
「翠!?」
「お兄ちゃん!?」
翠の後を追って、二人も急いで教室を出ていった。
それを見送った晃人は、一言呟いた。
「ブラコンの兄弟持つと…大変なんだな……」
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