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残暑
扇集院学園の夏休みは、他校よりも早く終わる。
購買付近には夏休みの気だるさが抜けきらない不良達がたむろしていた。
他の生徒は、選択授業のない者はそそくさと帰ってしまうため、校内はやたら静かだ。
「あちぃー」
「だりぃー」
「つまんねぇー」
三人の暇人、もとい不良達は、どうにもならない暑さに文句を言っている。
その前を、ひとりの男子生徒が通った。
さらさら黒髪に、真面目そうな顔にメガネ。
青のカラーシャツを着てネクタイを律儀に締め
胸には二学年理数科生特有の銀のバッヂ。
不良達のやっかみを一番買いやすい
理数科の二年生だった。
不良達は顔を見合わせ目配せすると
そそくさと通り過ぎようとする男子の腕を引っ張った。
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