初めての発作

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トイレに逃げ込む。 個室に入る。 鍵を掛ける。 アレ?眼が回る…。 これ以上動けなくなり、便器に腰掛ける間も無く、その場にくずおれる。 イキガデキナイ。 ナミダガトマラナイ。 アタシクルッチャウノカナ。 アタシシンジャウノカナ。 シヌ? イヤダ、コワイ、コワイヨ。 クルッチャウノカナ。 頭の中はそんな事ばかり。 身体はピクリとも動かせず、指先に血が通わなくなるまで握り締めた拳。 ぼんやりする頭で考えるのは 「仕事中にトイレで変死…か。」 死ぬ? それもいいかもしれない。 誰も泣いてくれないだろうなぁ…。 その時、口の端が吊り上がったのが解った。 アタシは死を覚悟した時、笑っていたようだ。 どの位の時間が経っただろう。 康太が怒りながら 「イイ加減出て来いや!」 怒鳴る。 動かない身体と口で何とか倒れた事を告げた。 「はぁ?ふざけるなよ!」 ガタガタ… 何かの音がする。 「はぁ?やべぇ、やべぇ!」 ばたばた… 康太がトイレを出て行く音がした。 気がついた時、目の前には今村さんというバイトのおばちゃんが居て、 「もう大丈夫。」 と言っていた。 いつの間にか便器に座らせられていた。 「康太君の車で休んでイイって社員の人から許可が出たから、ゆっくり休んでおいで」 寒い。 ヒーターのガンガンに効いた車の中、毛布を被っているにもかかわらず、寒くて震えが止まらない。 これはなんなんだろう? 1時間程休み、バイト復帰したけれど、世界は相変わらず回っており、ただカウンターに突っ立っているだけだった。
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