58人が本棚に入れています
本棚に追加
――謁見終了後・・・
俺達は、謁見の間からあまり離れていない所にある部屋へと案内された。
クリスティー司祭に呼ばれ、案内役を指示された女中が、その部屋の両開きのドアを開けると・・・
がばあっ!!
「我が娘よっ☆」
部屋に入るなり、俺の死角から誰かが飛びついてきて俺を強烈にハグって来て、目の前が真っ暗になってしまった。
ひしっ、とか、ぎゅっ、とかいう可愛らしい抱擁ぢゃなくて。
むぎょわあっ!!
こんな擬音が聞こえて来そうなほどに熱苦しく、激しく、痛く。
だから当然、それは気持ちの良いものぢゃなくて……
なんだか背筋に悪寒が走るくらい、気持ち悪いっ!!
「むっ!?むぐうっ!」
得体の知れない相手の胸元に顔を(俺の意志とは無関係に)うずめる形になっていてマトモに呼吸する事が出来ず・・・
俺は振り解こうともがいてみるが、相手ががっちり組み付いているのでびくともしない。
「もがっ!!むふぁふぃわぶぁへっ!!!(コラッ!!離しやがれっ!!!)」
「はっはっはっ☆
予想だにしない突然の再会でパニックになるとはわが娘ながら、まだまだ修行が足りんな。
言っておくがこの必殺技‘博愛堅め’は・・・そう簡単に振り解く事は出来んぞ?」
胸板から顔へと伝わって聞こえて来る、むさ苦しい勘違い野郎の勝ち誇った声。
‘わが娘’って言っちゃいるが、俺にはこんなふざけた技を仕掛けてくるようなノーテンキな親父はいない。
俺の親父は、不意打ちなんてしない主義の厳格な男だし・・・
第一、声の質が違いすぎている。
しかし・・・
はくあいがためってぇ??!
こんなふざけたネーミングの技なのに、どんなにもがいても振り解く事が出来ない。
情け無いのは、そんなバカバカしい技にあっさりと掛けられてしまった俺の方かもしれないが・・・しかしコレは。
くっ・・・苦し・・・い。
最初のコメントを投稿しよう!