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「こぉのクソバカ親父っ!瞳さんから離れんかい!!」
ごちぃん!!
小春の怒りの声と同時に、博愛固めなる技を掛けていた相手に何かが強烈にぶち当たる音が、相手の体を通して俺に伝わってきた。
「おぅっ!?
・・・え?!あ、あれ??ひとみ……って?」
抱きつく相手を間違えた事に気が付いた小春の親父殿が、目の前で怒鳴る小春を確認して抱擁を解くと、頭をさすりながら俺を見て口を開く。
「あ、これは失礼。
なるほど・・・どぉ~りで抱き心地が良いワケだ~。
なーっはっはっは☆」
たいして悪いと思っていない事が明白なノーテンキ笑いでごまかそうったって、そーは問屋が卸さんっ!
馬鹿笑いしている相手の顔を見てカチンと来た俺は……
歩幅半分ほど素早く下がり、その勢いを殺さないまま左足を軸にして、右足を後ろへ回し上げて……体をくるりと回転させた。
「……抱き心地がいいだぁ?!ふざけんな、この・・・」
「……息子に恥をかかすんじゃねえよ!この・・・」
同時に、小春も相手の頭の高さまでひらりと飛び上がり、右足を振り上げる。
「「スットコドッコイがあっ!!」」
ごごおおおお~…ん!
声のハモリ同様、二人の小娘が同時に放った怒りの後ろ回し蹴りと跳び蹴りのサンドイッチ攻撃を綺麗に喰らった小春の親父は、白目を向いて床に転がった。
「・・・ったく~…(汗)このバカ……わわっ?!」
「小春せんぱあいっ!!」
腰に両腕を当てて憤慨する小春と、ため息を吐いている俺との間に、甘い声を上げながら白いつむじ風が割り込んで来て‘ひしっ☆’と小春に飛びついてくる。
その突然の出来事に対応出来ずにバランスを保てなかった小春は、白い塊と一緒に床に倒れ込んで尻餅をついてしまった。
「いててて・・・加減してくれよ里美。びっくりするじゃねーか」
「良いでしょ?だって心配してたんだもの~…
」
今にも泣き出しそうな声を上げながら、女子高生は小春の上に覆い被さったまま、苦笑いする相手を抱きしめる。
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