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-数年後-
真っ黒な制服を着て、教室の中からぼんやりと外を眺めている少年が一人。どこか哀しそうな顔をしている彼の名前は神田希望(カンダノゾム)。立柳高等学校の2年生だ。
希望はいつも一人で、彼の周りには誰も寄せ付けないオーラを漂わせている。それは希望が親戚の家に引き取られて、この立柳町に来てからずっと変わらない。
おい、知ってる?
何を?
転校生来るってよ
ウソッ!?
どんな人だろ?
クラスメートの話し声が否応なしに聞こえてくる。
〔たかが転校生ではしゃぐなんてな…〕
クラスメートは転校生の話で盛り上がっていたが、希望だけは無関心だった。
そして、朝のSHRが始める。その間、希望は先生の連絡も転校生の自己紹介も聞き流し、顔すら見ていない。
騒がしい教室。クラスメートの関心は転校生に向けられ、他のクラスや学年からもやじ馬が来ている。
〔うるさいな…〕
希望は去年買ったメロディプレイヤーの音量を上げて、また外を眺めた。だから、騒がしい教室の騒音がざわめきに変わったことに気付かない。
転校生はゆっくり希望に近づいていく。そして、彼の肩を叩く。
「ん?」
希望が振り向くと、頬に人差し指が刺さった。
「またひっかかったね。ノンちゃん♪」
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