それぞれの翼

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無力で、愚かな自分を知った時。 私は鳥になりたかった。 空の中でもがく事の辛さを、知らなかったから。 私は海になりたかった。 命を育む事の大変さを、知らなかったから。 私は樹になりたかった。 ただ全てを受け入れる事の難しさを、知らなかったから。 みんな苦しいんだろう。 みんな羨ましいんだろう。 自分が何を持っているかすら、まだ知らずに。 周りから羨ましがられるほどの何かを、持っているのかも知らずに。 鳥には翼があり、海には生命があり、樹には全てを受け止める心がある。 人に、私に、あなたに、みんなに。 何かが、あるはずだ。 もし何も持っていなかったのだとしたら。 今私はここに、いないんだろう。 何か持っているのなら。 何も持たないわけでないのなら。 その何かを、使うべきではないのか。 だって、鳥が羽を持っているのに、地面を歩いて旅をするのは、おかしいから。 そこにはばたく羽があるのに、使わないのは、おかしいから。 みんなに、羽がある。 何かを宿した、羽がある。 だから私は、自分自身の羽で、空を飛ぼう。もがこう。 みんなにも、できるはずだ。 大空を、はばたけるはずだ。 それぞれの持つ、大きな、翼で。
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