第一章『過去』

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「お母さん!お父さん!」 俺は叫び続けた。 とにかく、母さんか父さん…いや、両親共に助かって欲しかったから。 「翔よく聞いて。もし、お母さんもお父さんも死んじゃったら、おばあちゃんの所に行きなさい」 「いやだよおぉ…死んじゃいやだよおぉ」 俺はあの時どのくらい涙を流したのか覚えていない。 悲しくて、悲しくて涙が止まらなかったのは覚えているけど…。 「君の親族は誰がいるの?」 「おじいちゃんとおばあちゃん」 「そうかい、ありがとう」 「お母さんはね、おばあちゃんの家に行きなさいって言ってたよ」 「本当に!助かっちゃったな~。家はどこらへんかな?」 「東京!」 「ありがとう。探してみるね」 この時もそうだ…俺は作り笑いをしていた。 内心まだ泣いていた。
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