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何も無い。
何もかもが無い。
ただの「無」。
思い出も。
生前の軌跡も。
今まで積み上げて来たものも。
それらの全てが無に帰す。
それが「死」だ。
死ねば一つの世界が消滅すると言う。
それは事実だと思う。
なぜなら、自分の主観こそが、自分の世界なのだから。その自分が死ねば、世界は消滅して当然だ。
世界………大きい意味での世界は、確かに無くならないだろう。それこそ隕石が地球にでも落下して人類が滅びでもしない限りは。しかし、死ねばそこに干渉することは出来ないのだから、それは無いのと同義だ。
つまり、主観とは世界であり、世界とは日常なのだ。
それが、壊れた。
半年前のあの日に。
いや………家族が死んだ時点でなら、俺は辛うじて「生きていた」と呼べたかもしれない。
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