僕と君との追い掛けっこ

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僕と君との追い掛けっこ

君が僕の先を歩く。 僕はその後に続く。 最初は笑いながら歩く。 急に立ち止まる君・・。 不思議な表情で見る僕。 君の顔が言ってる。 『不満だ』・・と。 無言の君に代わって、僕に伝えて来た。 『どうしてそうなるの?』・・と。 僕と君は暫し沈黙。 最初に動いたのは君で、僕を置いて、先に歩き出した。 僕は慌てて歩き出す。 それでも君との距離は縮まらず・・。 僕が呼び掛けた。 君は無視をした。 それでも僕は諦めず君の名前を呼んだ。 君は相も変わらず僕を無視して歩き続けた。 僕は今度は大きな声で君の名前を呼んだ。 すると君は僕を振り返り、呆れた様な・・哀しそうな顔をして、又・・僕を置いて歩き出した。 意味深な君と、理解不能な僕。 こんな僕達は何度も同じ事を永遠と繰り返した。 君が僕の先を歩き。 僕がその後に続く。 先に歩く君に追い付こうとする必死の僕。 そんな僕の耳に銃声が聴こえた。 君が僕の先を歩き。 僕がその後に続く。 僕の先を歩いていた君の体はゆっくりと地面に倒れる。 周りの飛び散る紅い水と共に倒れた君。 君が僕の先を歩き。 僕がその後に続く。 けれど、今僕の目の前にある光景は、紅く染まる君の体と、虚ろな君の瞳。 僕の先を歩いていた君は、今や・・地面に横たわる。 徐々に閉じて逝く君の虚ろな瞳。 君を抱き起こす僕は必死。そんな君は深い眠りに堕ちて逝く。 そんな君を必死に起こす僕は君の名前を呼んだ。 目覚めることのない君と、必死に起こそうとする僕。 君は僕の先を歩き。 僕はその後に続く。 僕はどんなに頑張ったって君には追い付かない。 僕の眠りを待ってね? 直ぐに君に追い付くから。 僕の腕の中には僕の眠り姫が静かに眠っている。 愛してるよ? 何時までも君を・・。 僕と君との追い掛けっこは更に始まった。
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