序章:月は総てを照らす

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    「はっ、はっ、はっ…っ!」 薄白い三日月の下。 灯りの殆んど無い、仄暗い路地裏。唯一の光源は白々と差す月光のみというそこを、ひとりの少女が駆けていた。 長い金髪を靡かせ、息を切らし、背後を気にしながら延々と。 その姿から何かに追われている事は用意に想像出来るが、少女以外に人影はまったくない。 彼女を追う者の姿も 彼女を救う者の姿も まったく見えない。 追っ手を振り切ろうと駆け回った結果、少女は袋小路へと迷い込んだ。 逃げ切れない。 その思考が、彼女の肢体から力を奪う。それを吹っ切るように頭を振り、少女は今来た道を戻ろうと踵を返す。 だがその視線の先に、既にそれはいた。  
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