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少女の目に涙が溜まり、溢れ出す。
首をゆっくりと横に振るのは、拒絶の証。唇は紡ぐ言葉を忘れたかのようにただ上下し、切れ切れの吐息を出すだけ。
既に時刻は深夜。
加えて人気もない路地裏。例え大声を上げたところで、誰かが助けに入るなどということは考えにくい。
それどころか男と結託するような輩もいるかも知れない。彼女の迷い込んだこのスラム街の路地裏は、そういう場所だった。
「イヤ…」
少女の背が壁に当たる。それすなわち、それ以上逃げ場はないということ。
それを見た男は唇をいやらしげに歪め、また笑う。
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